食の彩々

グングン上昇する気温に比例して、
倦怠感が高まってしまう「夏バテ」。
早めの対策が肝心です。
今年は食生活をちょっと工夫して、
快適な夏を過ごしましょう。




 

ビタミン・ミネラルの 欠乏が、夏バテを招く

 

 梅雨を過ぎれば、本格的な夏の到来です。蒸し蒸しとしたうだるような暑さが続くと、もともと夏が苦手な人だけでなく、普段は健康な人でも身体のだるさを感じたり、食欲がおとろえたり、また何をするのもおっくうになったりします。
 「夏バテ」「暑気あたり」は、なぜ起きるのでしょう?
 最も大きな要因は「ビタミンB1の欠乏」です。ビタミンB1は、身体や脳の活動に欠かせない栄養素である糖質を分解して、エネルギーに変え、疲労の原因となる乳酸の蓄積を防ぎます。ビタミンB1が夏場に欠乏するのは、水に溶けやすく、汗や尿に混じって排出されてしまうため。暑い最中はつけ麺やジュース等のドリンク類をはじめ、糖質が豊富な食べ物を頻繁に摂りますが、ビタミンB1が欠乏ぎみだと、せっかくの糖質もエネルギーに転換できなくなり、身体が重い、気力が出ない、疲れやすいといった症状となって現れるのです。

 2つ目の要因は「各種ミネラルの不足」です。ミネラルはナトリウムやカルシウム、鉄、カリウム等、身体の働きを正常に整える重要な元素。車にたとえると潤滑油の働きを担います。ビタミンB1同様、汗・尿と一緒に体外に排出され、不足すると“潤滑油切れ”の状態となり疲れやすくなります。
 3つ目の要因は「胃腸の機能低下」です。夏の胃腸は、ジュースやアイスコーヒー、冷菓、ビール等、冷たいものの摂り過ぎで、とかく弱りがち。消化不良から食欲不振に陥り、ひいては全身の倦怠感につながってしまいます。
 夏バテの理由はもちろん他にもあります。クーラーのあたり過ぎで身体の温度調節がうまくいかなくなるのは、その一例ですが、大きな影響を及ぼすのは以上の3点。食生活に注意を払い「欠乏しやすいビタミンB1やミネラルを意識して補給し、かつ、胃腸の調子を整えること」で、夏バテを防ぐことができるのです。

「土用のウナギ」は
江戸時代の宣伝コピー
 暦で立秋の前の18日間を夏の土用といい、期間中の丑の日はウナギを食べる慣わしがあります。「暑い土用丑の日はウナギ」と最初に言い出したのは、エレキテル(起電機)で有名な、かの平賀源内 (1728〜79)。
 ウナギの効用を知ってか知らずか、商売不振の鰻屋の店頭に「本日 土用の丑」と貼紙したところ、たちまち大繁盛に。何気ない「宣伝文句」が新たな需要を喚起したわけです。




効果的な夏バテ対策



豚冷しゃぶ
ビタミンB1たっぷりの豚肉に 良質のタンパク源である玉子。
バランスの良い組合わせを3種のたれで。

■材料(4人分)*写真は2人分

豚肉(しゃぶしゃぶ用)400g
刻みきんし (あじかん製品)60g
トマト 1/2個
貝割れ菜 1/2パック
人参 1/3本
レタス 1/2個
ミョウガ 1個
大葉 3〜4枚
白ネギ 1/3本

(ごまだれ)
練りごま 大さじ2
みそ、砂糖、酢 各大さじ1
ショウガ汁 小さじ1
だし汁 大さじ2

(ピリ辛だれ)
酢、砂糖 各大さじ2
醤油 大さじ4
酒、だし汁 各大さじ1
豆板醤 小さじ1
ニンニク、ショウガ
(みじん切り) 各1片

(梅だれ)
梅干し
(種を除き
 ペースト状にする)6個分
酒、醤油、みりん 各大さじ2
砂糖 大さじ1
だし汁 大さじ2

■作り方

  1. 人参は千切り、レタスは太めの千切り、貝割れは根元を切り落として半分に切る。ボウルに合わせて水にさらし、水気を切っておく。
  2. 葉と白ネギは千切りにし、ミョウガは薄切りにする。トマトはくし切りにする。
  3. 豚肉は熱湯で茹で、氷水にとり、水気を切る。
  4. A,B,Cそれぞれを合わせ、たれを作る。
  5. 1.2.3.を彩りよく盛り、4のたれをお好みでかけていただく。

対策1
豚肉や玉子、ウナギ等で ビタミンB1を補う!
   
 ビタミンB1をたくさん含む代表的な食材は豚肉、玉子、ウナギです。いつもの料理と目先を変えて、味付けを夏向きにすれば、食欲もわいて無理なくビタミンB1が補給できます。
[豚肉]薄切り肉はゆでて「冷しゃぶ」や「辛子みそかけ」に。さっぱりとおいしくいただけます。辛子みそは白みそに砂糖とだし汁を加えて練り、軽く火にかけてから酢、洋辛子を入れて作ります。
 豚肉はまた、ニンニクやタマネギ、ニラ等の香りの強い野菜によく合います。これら香味野菜には、ビタミンB1の吸収を促し、働きを高めるアリシンが含まれているので、栄養面 でも理にかなっています。豚肉+香味野菜の野菜炒め、あるいは、すりおろしたニンニク・タマネギを冷しゃぶやつけ麺のたれに入れて、ぜひ食べてみてください。
[玉子]玉子は良質のタンパク源でもあり、糖質過多に傾く夏の食卓には欠かせない食材です。使い勝手がいいのは、きんし玉 子です。「ばら寿司」や「そぼろ御飯」、「つけ麺」等に合わせると、彩りも鮮やかに。タンパク質とビタミンB1が同時に摂れ、疲れ気味の時も元気が出ます。口当たりのいい玉子豆腐も夏向きの味覚です。玉子を溶いてだしを合わせ、型に入れて蒸し上げ、冷やして食べます。
[ウナギ]小さく切った蒲焼きを玉子焼の芯にして巻き込む「う巻き」は、玉子とのダブル効果でビタミンB1を大量に摂取できます。小口切りの蒲焼きをキュウリと合わせる酢の物「うざく」もおすすめです。キュウリは比較的、各種ミネラルが豊富なので、栄養バランスのいい一品となります。
対策2
ミネラル補給は野菜+脂質、 魚+味噌がポイント!
[緑黄色野菜]夏の緑黄色野菜の代表シシトウ、ピーマン、オクラ、シソ、グリーンアスパラは「精進揚げ」に。そのままでも、つけ麺に合わせてもおいしくいただけます。油を使うことで、夏に不足しがちな脂質を補い、緑黄色野菜に含まれるカロチンの吸収が高まります。ニラやモロヘイヤはさっとゆで、だし醤油をかけて「おひたし」に。すったゴマを加えれば、脂質を補給でき、風味もよくなります。
[背の青い魚]サバやイワシ等は、同じくミネラルが豊富な味噌を使って料理するといいでしょう。新鮮な青背の魚をネギやショウガ、ゴマと一緒にたたき、御飯にのせ、濃いめの味噌汁を冷ましてかけます。いわゆる「漁師めし」の一種で、涼感と風味が食欲をそそります。切り身を使った「味噌煮」も簡単でおいしい一皿です。だしに砂糖と酒を加えて煮立て、魚を入れ、軽く煮てから味噌を溶き入れ、魚に火を通します。食べる時は針ショウガを盛ります。
対策3
冷たい飲物は控え、 朝食を摂って胃腸を正常に。
 冷たい飲物をできるだけ控えることが胃腸の働きを正常に保つ最大の秘訣です。水分はあたたかな飲物で摂取するようにします。食事は、ほんの少しでも必ず朝食を摂り、胃腸を朝から働かせましょう。少量ずつよく噛んで食べるのも、胃腸の負担を軽くするためには大切です。
 どうしても食欲がわかないときは、味つけに酢を使ったり、クエン酸を含む食前酒(梅酒、ワイン等)を試してみましょう。胃液の分泌が高まり、食欲が増進します。コショウやショウガ、トウガラシといった香辛料を活用するのも効果的。ピリカラの味と香りが食欲を促し、胃腸の働きを活発にし、身体の芯から目覚めさせてくれます。
 3つの対策をしっかり実行して、元気よく夏をのりきってください。
監修/フードコーディネーター 梶川 智代

食の神々 十

白糸に象徴される素麺の神
【 大物主命 (おおものぬしのみこと) 】(日本)
 夏と言えば素麺。名高い奈良県の三輪素麺には不思議な伝説があります。古事記によると、活玉依姫(いくたま よりひめ)の元に夜ごと身元の知れない男が通ったそうです。やがて姫は妊娠します。男の素性を確かめるために姫は父母の言いつけに従い、男の衣に糸をつけた針を刺しました。翌朝、糸をたどっていくと、ある山の社に入りました。男は山の神、大物主命だったのです。
 残された糸が三筋とぐろを巻いて残っていたので、その山は後に三輪山と呼ばれるようになりました。ちなみに白い糸は、白蛇を暗示するとの説もあります。
 さて、この大物主命の子孫、大田田根子命(おおたねのみこと)は三輪山をご神体とする大神神社(おおみわ)の神主となりました。その12世の孫、穀主(たねぬし)が大物主命の伝説を伝えるために糸のように細い素麺を創始したと伝えられています。


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