ミネラルウォーター(※)の”ミネラル”とはいったい何でしょう? ミネラルは人間が生きていくのに必要な元素のこと。 具体的にはカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、マンガンなどです。 つまりミネラルウォーターとは、 これらの元素を含んだ水のことなのです。 ミネラルを含んだ地下水は、 大昔から世界各地で飲まれ、 一部は民間療法にも用いられてきました。 「なぜかはわからないけれど、 飲めば身体の調子がよい」 ということが経験的に知られていたわけです。 19世紀になって、 こうした地下水の成分を科学的に分析し、 消化器系疾患や腎臓・泌尿器系疾患などに 治療効果があることを証明したのが フランスでした。 そしてボトリング技術の進歩とともに、 ミネラルウォーターが流通するようになり、 世界に広まっていったのです。 ※日本では人口的にミネラルを加えたものもミネラルウォーターに含めていますが、本来は無添加・無殺菌・非加熱の自然そのままの地下水を指します。
「1日に1.5リットル、できれば2リットル」
体内の水分はスポーツ時はもちろん、 通常も汗となって蒸発していきます。 汗にはミネラルも含まれていますので、 失われた水分、ミネラルを補うために 1日1.5〜2リットルは飲みたいもの。 夏場はなおさらです。
「1回あたりコップ1杯程度」
1度に多飲しても、 身体に必要な量以外は 排泄されてしまいます。 ガブ飲みは胃酸を薄め、 胃に負担をかけるだけ。 少しずつが基本です。 その際にペットボトルに直接口をつけずに、 必ずコップに移して飲んでください。 ミネラルウォーターは 塩素等が入っていないため、 腐りやすいのです。
「タイミングを考えて飲む」
飲むタイミングも大切です。 まず、朝起きぬけに1杯。 これは腸のぜん動運動を促します。 次に食事をしながらの1杯ずつ。 これは消化を助け、 便が固くなるのを防いでくれます。 この他、身体を動かしたあと、 入浴後に1杯ずつを飲み、 失われた水分とミネラルを速やかに補います。 以上、1回250ccとして1日6回、 計1.5リットルを無理なく飲めます。
ミネラルウォーターは 大きく硬水・中硬水・軟水に分けられます。 その分類のもととなるのが硬度。 水に含まれるカルシウムと マグネシウムの量を数値化したもので、 数値が大きいものを硬水、 小さいものを軟水、 その中間を中硬水と呼びます。 おおざっぱな分け方ですが、 市販のミネラルウォーターのうち、 採水地(原産国)が「欧州のものは一部を 除いてほとんどが中硬水・硬水」 「日本のものは大半が軟水」 と考えていいでしょう。 これは日本の土壌にカルシウム、 マグネシウムなどの ミネラルが少ないためです。 昔の日本人は不足しがちなミネラルを ヒジキやワカメなどの海草類で 補ってきました。 しかし、最近は食の欧米化にともない、 海草が食卓にのぼることも少なくなり、 不足するミネラルを 補いきれなくなってきています。 また、ダイエットを目的に 野菜中心の食生活をする人も要注意。 日本の土壌で育つ野菜は 水と同様にミネラルが少なく、 野菜だけでは健康を維持しにくいのです。 欧州にもベジタリアンは大勢いますが、 それはミネラル豊富な野菜あってのこと。 日本とは条件が違うのです。 そこでおすすめしたいのが、 「ミネラル不足をミネラルウォーターで補う」 方法です。 効果的に飲むコツをご紹介しましょう。
料理においても、 水は大きなウエイトを占めています。 最近ではミネラルウォーターを使って、 もっと料理を美味しく― と実践する方も多いようです。 そこで気をつけたいのが、 前述の硬度と料理の相性です。 日本料理の場合、 基本となる「ご飯」と「だし」はもちろん、 豆腐、そばやうどん、和菓子、日本酒、 さらには醤油や味噌といった 調味料の製造においてまで、 水にこだわってきました。 また、水を使って魚の脂分を落とし、 身を引き締める「洗い」という独特の技法も あみ出しています。 これらは軟水でこそ活きる素材であり、 技法なのです。 ごはんを硬水で炊くと、 パサパサになってしまいます。 また、だしを硬水で取ると、 昆布や鰹節の旨味が じゅうぶんに引き出せません。 緑茶も同じです。 一方、西洋料理には硬度が高めの水が 向いているものもあります。 スネ肉や豚骨を使ったスープには 中硬水が適しています。 獣臭さが抑えられた旨味のある スープを取ることができます (肉そのものは硬度の高い水で煮ると固くなってしまいます)。 下の図はそんなミネラルウォーターと料理との相性をまとめたものです。 ぜひ、参考にしてみてください。 ヘルシーで美味しい生活を、この夏、 ミネラルウォーターから始めてみませんか。
参考文献/「ミネラルウォーターで生まれ変わる」(早川 光著/マガジンハウス)、「マップルマガジン ミネラルウォーター」(昭文社編)、「名水百選」((社)日本の水をきれいにする会編/ぎょうせい)
食の神々 六
いたずら好きの水の神 【河(かっぱ)童】 人を引きずり込む、魚を盗むなど、 いたずら者として知られる河童。 竜や魚、人面魚身の姿で描かれる 中国・黄河の水神「河伯(かはく)」が ルーツではないかと 一説では考えられている。 その河伯が日本に伝わり、 日本書紀では、 河や雨を司る神として記されている。 しかし、河伯の頭に、いつ 皿が載って河童になったかは不明だ。 江戸の享保年間には、江戸の火事を 河童の群が消し止めた という話が広まり、 彼らを祀った水天宮のお守りが 大ヒットしたとの伝承が残っている (※)。 農村では田に水を引いた、 草取りをしたという話もある。 いかにも水の神様らしい活躍ぶりだ。 水に囲まれた日本の暮らしの中で、 河童は故郷中国よりも、 人間味のある存在として 語られている。 ※「五島物語-歴史と伝承-」 (郡家真一著/国書刊行会)による。