庶民に愛された素朴でぬくもりのある磁器

使う楽しみ、盛る楽しみ。
日常使いの器にこだわって、豊かさの質を高めたい―
食の世界を広げてくれる素敵な器を求めて、
愛媛県砥部町を訪れました。

砥石のかけらが器に




舟上で生まれた生活美

 日本最古の温泉、道後温泉のある松山市から南へ約13km。砥部焼のふるさと愛媛県砥部町は、四国山地を間近に望む温暖で閑静な町です。この地で磁器づくりが始まったのは、18世紀末の江戸時代。町の西方にある砥石山は、その名の通り日本刀や包丁を研ぐ砥石の産地で、砥石のかけら※を再利用するために始まったのが砥部焼なのです。
 「砥部町は盆地で田畑が少ないため、暮らしていくための一つの手段として必然的に器づくりが始まりました。それから二百年余りも連綿と受け継がれています」とお話くださったのは、砥部焼伝統産業会館館長の武本猛氏。
 町内には現在、約90余りの窯が点在。燃料こそ薪からガスや電気に変わりましたが、今でもその多くは昔のままの手法で器を生産しています。製品の9割近くが地元を訪れる観光客に販売され、一部が料理店、旅館などへ納入されています。

陶器は粘土(陶土)が原料ですが、磁器は器づくりに適した岩石(陶石)から作られます。陶石として用いるには石英(せきえい)や長石(ちょうせき)などの鉱物成分が含まれている必要があります。器をつくる際はこの陶石を砕いて粉にし、水に沈澱させて作った土を原料とします。砥部焼の場合、初期は同様の成分を含む砥石のかけらを用いましたが、現在はより器に適した陶石を使っています。

 砥部焼は茶碗や皿などの日用雑器が主体。代表的な器が ”くらわんか茶腕 “です。
 「江戸時代、商都大坂の淀川を行き交う舟を相手に、飯や汁、餅などを売るために使われた茶碗で、その時の売り言葉に『くらわんか〜(食べないか)、くらわんか〜』と言ったことからこの名が付いたそうです」(武本氏)。高台が太くて、安定性がよい―くらわんか茶碗の独特の形は舟の上での使い勝手を考えたデザイン。少々ぶつけても壊れない丈夫さも、人気を集めた理由でした。
 こうしたくらわんか茶碗の特色は、現代の砥部焼にも生かされています。ぽってりと厚みのある頑丈なつくり。手になじみ、しかも安定感のある形。白磁の色は真っ白ではなく、どこか優しさのある色合で、料理を美味しそうに見せてくれます。使いやすく気取りのない砥部焼は、一度使えばきっと食卓に欠かせない存在となることでしょう。

[連絡先]
砥部焼販売協同組合
〒791-2113 愛媛県伊予郡砥部町拾町154-1
TEL 089(957)3511 FAX 089(957)3510

砥部焼は手づくり少量生産のため、写真掲載の器もご注文からお届けまで日数のかかる場合があります。あらかじめご了承ください。



いつもの料理も器を変えたり、
盛り付け方を工夫すると、
まったく違った雰囲気が味わえるものです。
丸皿や角皿、足付きの器など、
デザイン豊富な砥部焼を使って、
そのポイントをご紹介しましょう。

器の形に合わせた 盛り付けのコツ

テーブル全体の印象を変えるには・・・

「色々な形の器にいかに美味しそうに盛り付けるか」も大切です。ここでは器のデザイン別にそのポイントを掲げました。また、同じ器を何通りにも使いこなすヒントとして、他のメニュー例(★印)も添えました。参考になさってください。

a.【アイスクリーム皿(めだか)】


フルーツ


足付きの器は改まった感じが演出できます。葉をあしらったり、砕いた氷を敷いておしゃれに。
★胡麻豆腐、刺身、天ぷらなど。
 ほんの少しの量で上品に。

b.【切立丸皿(唐草)】


シイタケの肉詰めフライ
イワシのアーモンドフライほか


3種の料理を盛り付ける際は三角形になるように盛るのが基本です。正三角形ではなく、ちょっと変型させるのがおしゃれに見せるコツ。箸で取りにくいものは手前に盛ると親切です。下の写真は同じメニューを布目長角皿に盛った例です。皿や小鉢で変化をつけるだけで、ずいぶん違った雰囲気に。

★オードブル盛り合わせ、
 寿司、天ぷら、トンカツ、カレーなど。

c.【切立丸皿(赤笹)】


チーズカナッペ


赤絵の器は料理の色味を1〜2色に抑えると粋になります。余白を生かすのも大切です。
★サバの塩焼き、レタスのサラダ、
 大根と大根の葉の煮物など。

d.【四方曲り鉢(菊紋)】


牛ごぼう ※「牛ごぼう」はあじかん商品です 


ペタッと低くならないよう、中高に盛り付けます。深さのある器は中心を向こう側にずらして盛り付けると料理がよく見えます。
★いんげんとキノコの胡麻あえ、菊の花と焼椎茸の酢の物、ずいきの酢の物、里いもの煮物など。

e.【平片口(呉須赤菊)】


サラダ


四方曲り鉢と同様、中高に盛り付けます。器の余白を生かすよう、量は少なめに。
★日本酒、たれ、大根や蕪の煮物、
 焼きなすなど。花器に使っても。



「ステキ! 今日はいつもと違う雰囲気ね」  テーブル全体のコーディネートは速効性が魅力。試したその日に嬉しい歓声が聞けるかもしれません。

「器のトーンを合わせる」

センスよく見せるコツは、テーブルに載せる陶磁器の質感を合わせること。陶器なら陶器だけ、磁器なら磁器だけでコーディネートしましょう。

「器の形に変化をつける」

器の形が画一的だと、面白みがありません。お手持ちの丸皿に、長方形・楕円形・八角形・変型(葉形・割山椒など)の器をプラスするか、足付きの器で高さに変化をつけましょう。なお、長方形と楕円形はテーブルで場所をとらず、何かと便利です。

「違う素材をアクセントに使う」

何品かを並べる時、1品は竹籠やガラス器などの異素材を使うとアクセントになります。また、お盆(折敷)やランチョンマットに1人分ずつ並べたり、テーブルクロスを敷いたり、真ん中に花を活けるなどの演出も効果的。グンと華やかになります。


イワシのアーモンドフライ


目も舌も楽しませてくれる変わりフライ。

■材料(4人分)

小イワシ 24尾
塩・こしょう 各少々
小麦粉 大さじ3

卵 1個
アーモンドスライス 40g
揚げ油 適量

■作り方

  1. 小イワシはうろこ・頭・内臓を取り、
    さっと洗って水けをきり、塩・こしょうをする。
  2. 小イワシに小麦粉・溶き卵・軽く砕いた
    アーモンドスライスの順に衣をつけ、
    中温(170℃)の揚げ油でカラリと揚げる。

シイタケの肉詰めフライ


旬のシイタケを使った変わりフライ。

■材料(4人分)

生シイタケ 12個
鶏ひき肉   200g
玉ネギ   1/2個
レンコン  3 cm
卵   1/2 個
ゴマ油  小さじ1
塩・こしょう・醤油 各少々

◇衣
小麦粉 大さじ4
卵    1/2個
パン粉 1カップ
揚げ油   適量

■作り方

  1. 玉ネギとレンコンはみじん切りにする。
  2. 鶏ひき肉に1と卵・ゴマ油を加えてよく練り混ぜ、ねばりが出たら塩・こしょう・醤油で味付けする。
  3. 生シイタケは石づきを取り、裏に小麦粉をまぶし、2を適量のせて丸く形づくる。
  4. 小麦粉、溶き卵、パン粉の順に衣をつけ、中温(170℃)の揚げ油で、きつね色に揚げる。


食の神々 七

火の神は煮炊きの始祖!?
【燧(すいじん)人】
昔、かなたに燧明国という国があった。この国には太陽も月もない。ただ、燧木という大木が生えていた。ある知恵者が燧明国にたどり着き、燧木の下にゆくと、木のあちこちが輝き、それがこの国を照らしていることに気がついた。確かめてみると、鳥が木の幹をつつき、その度に光を発していることがわかった。ここから知恵者は木に穴を開け、枝でこすって発火する方法を考え出し、人々に食べ物を調理することを教え広めた。このおかげで人は皆、加熱した物が食べられるようになり、お腹をこわすこともなくなったという。後に人々は知恵者を燧人―火を作る人―と呼び、神と崇めたという。


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