健康菌に親しむ
健康を醸し出す日本の伝統食

おなかが丈夫だと病気になりにくい!
今回は病気知らずの健康な体を
「腸」からつくる乳酸菌がテーマ。
発酵食品のチカラを探ります。

腸から元気になる
 かかった病気を治すのではなく、病気になること自体を未然に防ぐ──。「予防医学(未病学)」が進展する中、「腸」の持つ免疫機能があらためて見直されています。
 腸は単に消化吸収を担うだけでなく、体内に侵入した病原菌等を撃退する免疫器官としても活躍。腸の働きを正常に保つと病気への抵抗力が高まり健康な体でいられる、と考えられているのです。
 乳酸菌をはじめとする善玉菌(プロバイオティクス)は、そんな整腸に重要な役割を果たす健康の味方です。善玉菌の豊富な食べ物を摂取することで善玉菌が生きたまま腸に届き、感染防御や免疫刺激、ビタミン合成ほか、健康に良いさまざまな作用をもたらします。
 乳酸菌というと、ヨーグルトやチーズ等の乳製発酵食品をイメージしますが、実は和食文化にも乳酸発酵を用いた食べ物がたくさんあります。醤油、味噌、漬け物といった伝統食品がそれです。
微生物の偉大な力
 発酵とはそもそも、自然界に存在する菌・酵母・カビ等の微生物(※)が、その酵素の力で食べ物の中の有機物(タンパク質・炭水化物等)を分解し、「人間に有益な物質を生み出す現象」です。中国では紀元前の周・漢時代に魚や肉を塩漬けにした発酵食品が誕生しており、わが国には弥生時代の初め頃、稲作と共に伝来したそうです。
 日本の発酵食品は原料の違いで3系統に分かれます。「穀物や豆を発酵させた味噌・醤油・納豆・酒の系統」「魚を発酵させた塩辛・鰹節・寿司(なれ寿司)の系統」「野菜を発酵させた漬け物の系統」です。
 発酵のメリットは健康パワーだけではありません。「保存性の向上=善玉菌が腐敗菌・雑菌を抑制」「栄養アップ=善玉菌が必須アミノ酸やビタミンを生産し元の食材より栄養豊富に」「香り・旨味の向上=発酵過程で独特の香りと旨味が発生」と、幾つもの効果があります。
 冷たい物の摂り過ぎで胃腸を壊し、夏バテや大病に陥りやすいこの時期。発酵食品でしっかり腸を鍛え、元気に乗り切りましょう。

(※)菌・酵母・カビ等の微生物:乳酸菌・イースト・コウジカビ等

善玉菌と悪玉菌が戦う腸内
《善玉菌の力で健康に》
 人間の腸内にはおよそ百種類の無数の菌が棲みつき、全部かき集めると重さが1kgにもなるそうです。菌には体に良い働きをする善玉菌と害をなす悪玉菌が存在。善玉菌が悪玉菌を抑え、さらに外から侵入する病原菌を撃退して体の健康を保っています。悪玉菌は左図のようにちょっとしたきっかけで勢いづきます。便が「黒っぽい・臭いが強い・コロコロと固い」時は悪玉菌が優勢。逆に腸内環境が良い時は「黄色っぽい・臭いが弱い・適度に柔らかい」便が出ます。発酵食品を常に補給して善玉菌をバックアップしましょう。




健康の頼れる味方“乳酸菌”
《悪玉菌やガンを退治》
 乳酸菌は乳糖やブドウ糖を栄養にして増殖。抗菌力のある乳酸や酢酸、芳香物質、ビタミン類を作り出す善玉菌です。よく聞くビフィズス菌は乳酸菌の一種です。乳酸発酵により食材の風味、保存性が良くなることは大昔から知られ、いろいろな食べ物に利用されてきました。最近は整腸はむろん、抗ガン、病原菌抑制等の作用も明らかになり、いっそう期待が高まっています。

【腸内をきれいに掃除】
乳酸菌は腸内のクリーナー。悪玉菌が作る有害物質を吸着して排除する等、食物繊維と似た働きをします。発酵食品の常時補給でこの働きが維持できます。

【悪玉菌・病原菌を一掃】
乳酸菌の最大の武器は乳酸・酢酸です。タンパク質を腐敗させてガンや動脈硬化を誘発する悪玉菌や、外から入り込むO157等の病原菌を酸の力でやっつけます。

【免疫力を強めピロリ菌も溶解】
体内の防衛軍である免疫細胞を活性化しガンや感染症を防ぐ乳酸菌。最近は慢性胃炎・胃ガン・胃潰瘍を引き起こすピロリ菌を溶かす作用も注目されています。

【悪玉コレステロールを抑制】
乳酸菌には心臓病や脳疾患の原因となる悪玉コレステロールを抑える力も。食べ物の中のコレステロールを吸着して体外に出し血管内に入り込むのを防ぎます。
下記は上記の乳酸菌パワーが得られる発酵食品ごとの摂取目安です。幾つか組み合せれば、その分、効果は高まりますが、どれか一つでもOK。塩分過多の心配が少ない納豆とヨーグルトは量が増えても構いません。

味噌なら :約12g(味噌汁1杯)
醤油なら :約20g(大さじ3杯)
納豆なら :約40g(パック1個)
ヨーグルトなら :約100g(小カップ1個)

《乳酸菌によるO157の増殖抑制》
乳酸桿菌(乳酸菌)と食中毒菌のO157を混合培養(24時間)した実験の結果。乳酸菌の力でO157の増殖が抑えられることがわかります。
《乳酸菌による発ガン抑制》
発ガン物質を注射したマウスに乳酸菌を投与した実験。乳酸菌を与えた場合のガン発生率(150日後)は飲まない場合より約30ポイント低くなります。
これらの実験は人体に直接あてはまるわけではありません。
しかし上記のような「発酵食品の毎日摂取」を実行すれば健康が維持できると考えられます。
参考資料:「全国はっ酵乳乳酸菌飲料協会」HP

【醤 油】
選び方:乳酸菌や酵素が生きた非加熱の「生醤油(きじょうゆ)」を。香り・旨味・甘味が豊かです。刺身やサラダ、つけ麺等で生食します。
ヘルシーポイント:大豆のレシチンとビタミンE、乳酸菌が相乗効果を発揮。脳の老化を防ぎ、体の余分な脂肪を除去します。
もっとパワーアップ!:食物繊維の豊富なニラを刻んで生醤油に漬け置き、中華風たれに。冷たいもので整腸力が弱りがちな夏場の胃腸に最適です。

【味 噌】
選び方:速醸法でない本格熟成の「天然醸造」を。旨味や健康の素であるアミノ酸、乳酸菌の量が違います。和え物等で生食に。
ヘルシーポイント:醤油同様、大豆と乳酸菌の力が融合。ガンや老化の予防、血液浄化、整腸、美容のほか、酒毒も消します。
もっとパワーアップ!:「味噌+梅肉ペースト+だし」の梅味噌を焼肉たれに。疲労回復&抗菌の梅干しパワーが取り込めます。

【漬け物】
選び方:乳酸菌・酵素を多量に含む「ぬか漬け」を。特に乳酸菌の働きで酸味と旨味が強くなった「古漬け」がおすすめです。
ヘルシーポイント:夏バテに効くビタミンB ・B の量が生野菜の2〜10倍!食物繊維やミネラルも多く腸の働きを良くします。
もっとパワーアップ!:塩分を考え摂取量は小皿1杯(約50g)に。カテキン豊富な緑茶と味わえば抗ガン・整腸・強壮作用がアップ。
【なれ寿司】
選び方:魚とご飯を塩漬け発酵させた古来の寿司で、チーズのような風味と酸味が特徴。鮎、鯖、鯵、鮒等、種類は問いません。
ヘルシーポイント:乳酸菌の各種パワーはもちろん、心臓・脳疾患を防ぐ、魚の不飽和脂肪酸DHA・EPAが凝縮されています。
もっとパワーアップ!:ぜひビールの肴に。ビタミンやアミノ酸に富んだビール酵母は乳酸菌と共に体に必要な栄養を補給します。

料理例のように和食にも応用できるヨーグルト。容器の記号の意味を知れば、より目的に合った乳酸菌が選べます。

LG21:胃の中のピロリ菌を退治します。
LC1:免疫細胞マクロファージを強化。食中毒菌も撃退し今の季節にぴったりです。
GG、KW:免疫系を刺激。アトピーや花粉症等、アレルギー症の発症を抑えます。
L.ガゼイ.シロタ:ガンを抑制するNK細胞をはじめ、体のさまざまな免疫力を強化。
L.ロイテリ、BB536:抗菌物質を出す乳酸菌で腸内の悪玉菌を攻撃します。
ガゼリSP:腸に長く居着き悪玉菌を撃退。

夏の定番をヨーグルトを使った「変りつゆ」でいただきます。乳製品のコクがつゆの旨味を深め、ほど良い酸味が涼感を誘います。長芋と納豆でスタミナ面も抜群。箸の進む新しい味わいです。箸の進む新しい味わいです。
味噌床にゆで玉子を漬け込んだオツな逸品です。味噌に熱を加えないので、乳酸菌が生きたまま腸に届きます。まったりした黄身の味わいに味噌の風味がよくマッチ。ごはんにもお酒にも合います。
ヨーグルトたれの冷やしうどん
■材料(4人分)
うどん 4玉
錦糸玉子 適量
納豆 2パック
キュウリ 1本
長芋 80g
大葉 4枚
梅干し 4個
めんつゆ(ストレート) 600M
ヨーグルト 大さじ2
白ゴマ 適量

■作り方

1. うどんはゆでて流水で冷やしておく。
2. 長芋は皮をむき酢水につけておく。
3. 2. とキュウリは皮むき器でうすく削ぎ、水につけておく。
4. 器に1. を盛り付ける。その上に大葉と3. と納豆、梅干しをのせて、混ぜ合せたAにつけていただく。
ゆで玉子の味噌づけ
■材料(4人分)
4個
赤みそ 300g
白みそ 100g
砂糖 2カップ
みりん 大さじ6
ミョウガ 4個
大さじ2
砂糖 大さじ1/2
適量
大葉 4枚

■作り方

1. 鍋に水をはり卵を入れて、菜箸で混ぜながら沸騰させる。沸騰のまま(100℃)5分ゆでて、かわをむく。
2. ボウルにAを混ぜ合せて、ビニール袋に入れる。ゆで玉子を先程のビニール袋に入れて口を縛る。
3. 1日冷蔵庫で寝かせる。
4. ミョウガは縦1/2に切って、塩をふってザルに並べ熱湯をかけて、すぐにBに浸す。
5. 器に大葉と半分に切ったゆで玉子のみそ漬けとミョウガをのせる。
参考資料:日本豆腐協会公式HP、HP『精進料理に挑戦しよう!』

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