食欲をそそる独特の香ばしさとコク、奥行きのある旨味を秘めたゴマ(※1)。日本人は世界的な「ゴマ好き民族」で、世界のゴマ貿易量の3割近く(約16万t)がわが国に輸出されています。
「ごまかす」「ごまをする」といった生活の身近な言葉も実はゴマに由来。拙い料理でもゴマを加えるとたちまち美味しくなることから「胡麻化す」。すり鉢でゴマをすると、あちこちにベタつくことから、八方美人的なふるまいを指して「胡麻を摺る」となったそうです。このようにゴマは私たちの生活に深く溶け込んでいます。
稲作よりも早く縄文時代に中国大陸から伝わったとされ、7世紀頃(※2)、獣肉に替る貴重なたんぱく源として重宝されました。広く庶民が口にするようになったのは江戸時代から。代表的な料理はゴマ油で揚げた天ぷらでした。
今では料理の味付けや彩りはむろん、餅や煎餅、和菓子、洋菓子、ファーストフード、麺類、ドレッシング・たれ類などに幅広く使われ、もはや欠かせない食材となっています。 |
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ゴマが愛される理由は味や香りばかりではありません。驚くほどの薬効を備えているからです。
洋の東西を問わず、昔の人はその健康パワーにいち早く気付き、さまざまな用途に使ってきました。たとえば古代エジプトやインドでは、ゴマ油を肌の潤いとハリを保つ化粧品aとして活用。古代中国では万病を防ぎ、いつまでも若い生命力を維持する「不老長寿の妙薬」として尊びました。
また日本では平安時代の最古の医学書『医心方』に、1. 老衰を防ぎ寿命を伸ばす 2. 内臓を強くし気力を高め肌の輝きを保つ 3. 体力が低下したり虚脱感を覚えた時の治療薬─と紹介されています。
古人が経験として語り継いできたこれらの薬効は、現代の成分研究により「確かなもの」と立証されつつあります。最近では、ガンや老化を引き起こす「活性酸素」の除去作用も明らかになり、大いに注目されています。秋口は病気への抵抗力が弱まる季節です。ゴマをもっと食卓に取り入れて、丈夫な体をつくりましょう。
(※1)ゴマ:ゴマ科ゴマ属の1年草。原産地はアフリカのナイル川流域とされ、栽培が始まったのは紀元前3000年頃。成分の大半は植物性脂質とたんぱく質。
(※2)7世紀頃:肉食を禁じる仏教の影響が大。特に禅寺起源の精進料理で活用(ゴマ豆腐、ゴマあえ、ゴマ油の炒め物・天ぷら等)。 |
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