日本酒を美味しく感じる季節。
和食の肴で日本酒を味わう一時は
まさに至福です。
今回はそんな日本酒の魅力を
探ってみました。
和食と相性のいい日本酒

 日本酒の起源は約2000年前の「口噛み酒」に遡ります。穀物や果実を噛み、唾液の酵素で発酵させる酒で、大陸から麹による酒造りが伝えられるまで造られたそうです。
 当時の酒は神に捧げる特別な飲み物でした。天災による凶作を恐れた祖先は神に酒を供えて豊穰を祈ったのです。生活を潤す嗜好品となったのは13世紀以降といわれています。
 そんな稲作文化が育んだ日本酒は和食と大変よく合います。煮物にしても単独で食べるより、日本酒と一緒に味わうことで美味しさがふくらみます。
 その相性の良さはどこからくるのでしょう。
 まず「日本酒=発酵食品」であることがあげられます。日本酒は醤油や味噌等、大昔から慣れ親しんでいる発酵調味料と同じ麹菌の恵み。日本人の体内には昔も今も、それらの「親戚菌」がたくさん存在しています。そのため日本酒と発酵調味料で味付けされた料理を一緒に口にすると、いわばDNAレベルで美味しいと感じるとの説があります。
 成分的にも日本酒の旨み(アミノ酸・コハク酸等)は、魚介や野菜、海草といった和食材の旨み(イノシン酸・グルタミン酸等)とマッチします。日本酒は米の旨みや甘みを抽出して液体に昇華させた「米のエキス」。ごはんが魚や野菜の料理と合うように、米のエキスもそれらとよく合い、互いの旨みを際立たせます。
 和食を引き立てる日本酒の力は幾つもの要素が輻そうして織り成す結晶なのです。


食べる米と別もの!
 酒を造るための米は「酒造好適米」といって、コシヒカリ等の食用米と区別されています。なぜでしょう? 酒造りは簡単にいえば、米のデンプン質を糖分に変え、これを麹・酵母で発酵させてアルコールに変える作業です。酒造好適米は酒造りのカギとなるデンプン質の含有量が、食用米に比べて多いのが特色。デンプン質は米の中心部「心白(しんぱく)」に含まれますが、酒造好適米はこの心白が太く、食用米よりも粒が全体的に大きめです。酒造好適米には有名な「山田錦」をはじめ、「美山錦」「八反錦」「五百万石」等の銘柄があります。
本当だった「百薬の長」
 日本酒は健康にも大きな力を発揮します。
 注目されるのはガンに対する有用性です。国立ガンセンターでは日本酒を毎日飲む人は全く飲まない人に比べ、あらゆるガンに罹る可能性が低いと報告。日本酒の濃縮液でガン細胞の増殖が抑制されたとの実験報告もあります。
 心臓や脳の疾患、ボケの予防も注目されます。日本酒には心臓の働きを活発にして血のめぐりを良くし、血管内のヘドロ(悪玉コレステロール等)を除去する働きがあるのです。血行促進により皮膚表面に栄養が行き渡ることから美肌・美容効果も期待できます。
 一方、肝臓に悪そうとの声がありますがこれは誤解。実際、日本酒の消費量が多い東北圏は他の地域に比較して肝硬変や肝臓ガンによる死亡率が低いというデータが出ています。
 もっとも体に良いからといって飲み過ぎるのは論外です。健康上の利点が期待できるのは一日の適量約2合(360ml)を守ってのこと。飲んで食べて健康を維持する秘訣は「ほどほど」です。

味と香りに直結する精米
 酒造りにあたっては、まず米を精米します。酒の味や香りに悪影響を与える米表面のタンパク質・脂肪を取り除くためです。精米すればするほど、つまり削る割合を高くするほど、雑味のない香り高い酒ができます。中には米粒が半分以下になるまで削ることもあります。この精米の度合、いわゆる「精米歩合」はビンのラベルに記載されますが、見る時はちょっと注意が必要。削った率ではなく「残った米の率」で示されるのです。たとえば「精米歩合70%」とある場合は「削り30%・残り70%」を表します。ちなみに食用米の精米歩合は90%です。

 日本酒は味の違いで、大別できます。
 まず甘口か辛口か。これは、糖分の含有量で決まり、多ければ甘口に、少なければ辛口になります。これは酸味とも連動するものです。
 そして、旨みが濃いか、淡いか。これは主にアルギニン・グルタミン酸をはじめとするアミノ酸の含有量で決まります。これが濃いと「濃厚」な酒に、淡いと「淡麗」な酒になります。濃厚は「濃醇である」「コクがある」、淡麗は「さっぱりしている」「軽快な味わい」等、さまざまに表現されます。
 この甘口・辛口、旨みの濃・淡で日本酒は4つに大別することができます。 これらのことをまとめたのが左の図です。すべての日本酒がこの分類にきちんと当てはまるわけではありませんが、日本酒を購入する際の一つの目安になります。
 チャートを見ればおわかりのように、4つの酒にはそれぞれ個性があります。辛口なら辛口と、自分の好みにとことんこだわるのもいいものですが、飲む季節やその時の気分に合わせ、酒・肴を変えてみるのも面白いもの。
 いつもと異なる味覚との出会いが、日本酒と和食を楽しむ喜びを大きく広げてくれるでしょう。
味と香りに直結する精米
日本酒の味の違いは、造る地域の気候風土や米、水の違いによってもたらされるといいます。
各地の酒の特徴を大まかにまとめてみました。
北海道・東北 冷涼な気候と良質な雪解け水、米(美山錦ほか)に恵まれた土地柄。北海道は辛口で濃厚な酒。東北は甘口・辛口共にあり、いずれも濃厚です。
関東   利根川沿いの穀倉地帯を背景に酒造が盛んです。米は美山錦・若水ほか。甘口・淡麗です。
北陸・東海   日本アルプスのミネラルに富んだ水と寒暖差の著しい気候が酒造に最適。米は五百万石・若水ほか。辛口が中心で、三重・岐阜・愛知・石川は濃厚。福井・静岡・富山は淡麗です。
近畿   灘や伏見等の銘醸地が集中。米は山田錦・五百万石等。濃厚・淡麗共に作られますが、灘はミネラル豊富な「宮水」で仕込まれ辛口。伏見はミネラルの少ない軟水仕込みで甘口です。
中国   中国山地の天然水と米(五百万石ほか)に恵まれる山陰はやや辛口・淡麗。山陽は軟水仕込みの広島をはじめ、おおむね甘口・濃厚です。
四国・九州   両地域とも甘口・辛口を問わず、郷土料理のしっかりした味に合わせた濃厚タイプが圧倒的。米は主に山田錦です。

美味しいだけでなく体にも優しい、そんな「膳流」の小料理をお楽しみください。
ここでは前出のチャートに沿って、4つの酒、それぞれに合う和食を紹介します。
●おすすめは「豆腐のカニあんかけ」
 飲みやすさで人気の辛口・淡麗酒ですが、意外と肴を選ぶ酒でもあります。脂っこい料理はせっかくの爽やかな味わいを消してしまうので避けたいところ。そこで口あたりの良い、だしあんで仕上げたこの料理。淡泊な味の筆頭ともいえる豆腐は、カニと同じくアルコールの代謝を促進する高タンパク食材です。あんの具にノンカロリーのキノコ類を使うと、飲酒によるカロリー過多も防げます。

豆腐のカニあんかけ

■材料(4人分)*写真は1.5人分
絹豆腐
2丁
ズワイガニ(殻からむいて取り出す) 100g
えのき茸 1/2パック
しめじ 1/2パック
だし汁 適量
水溶き片栗粉 大さじ2
三つ葉
少々
白だし 大さじ3
1&1/2カップ

■作り方

  1. えのき茸は根元を切り落とし、長さ半分に切ってほぐし、しめじは根元を落とし、小房に分ける。ズワイガニは粗くほぐしておく。
  2. 豆腐はだしで温めておく。
  3. 鍋にAと1.を入れて煮、火が通ったら片栗粉でとろみをつける。
  4. 器に2.を盛り、3.をかけ、三つ葉を添える。
白だしの薄め加減はお好みで。豆腐もあんもよく温めてどうぞ。
●おすすめは「豚肉の香味ソースがけ」
 前述したように日本酒と発酵食品は理屈抜きでよく合います。しかも味噌は昔から「肝臓食」といわれるほど、肝臓にいい食品。肝機能を最大限に向上します。高タンパクの豚肉をその味噌で味付けしたこの料理はまさに理想的な肴。もともと風味の強い味噌に、ニンニクと豆板醤をプラスしてさらに個性的に。豚肉も油で焼いてコクを出し、どっしりした酒の味に合わせます。

豚肉の香味ソースがけ

■材料(4人分)*写真は3人分
豚ロース薄切り肉
2丁
きゅうり(せん切り) 100g
白ネギ(せん切り) 1/2パック
片栗粉 1/2パック
サラダ油 適量
大さじ2
醤油
大さじ2
赤みそ 大さじ1/2
砂糖 小さじ5
1/3カップ
豆板醤 小さじ1/2
にんにく、生姜(みじん切り) 各小さじ1

■作り方

  1. 豚肉は一口大に切り、片栗粉をまぶし、油を熱したフライパンに入れ、強火で両面焼き、皿に盛ってきゅうりと白ネギを散らす。
  2. 合わせたAをフライパンに入れて強火で煮る。煮立ったら酢を加えてひと混ぜし、熱いうちに1.の肉の上にかけて頂く。
豚肉に片栗粉をつけて焼くと、旨味を逃さず、表面カリッと焼けます。熱々のたれをジュッとかけてどうぞ。

●おすすめは「やわらかつくね」
 炒めたタマネギとヤマイモを加えることで旨み・甘みを濃くした鶏ミンチ、とろりとした醤油とみりんの甘辛いタレが酒の味にベストマッチします。肉類等の高タンパク食材は肝機能を高め、アルコールの分解を促してくれる食材。酒の肴にはうってつけです。同じように肝臓の働きをよくするビタミンCの豊富な生野菜を添えると、二日酔いを防ぐ効果が一層高まり、箸休めにもなります。

やわらかつくね

■材料(4人分)*写真は1.5人分
鶏ミンチ
300g
玉ねぎ(みじん切り) 1/2個
昆布だし 1&1/2カップ
サラダ油 少々
刻み海苔、白ごま 各適宜
つけ合わせ(大根・きゅうり・人参) 各適宜

1/2個
大さじ1
砂糖 少々
みりん 少々
淡口醤油 小さじ2
大和芋 50g
醤油
大さじ2
大さじ2
みりん 大さじ2

■作り方

  1. 鶏ミンチにAを合わせてよく混ぜ、油で炒めて冷ました玉ねぎも加えて混ぜ、だ円形にまとめる。
  2. 鍋に昆布だしを煮立たせ、1.をいれてたく。
  3. フライパンに油を薄く引き、2.の両面に軽く焼き色をつけ、Bのタレをからめて焼く。
  4. 皿に盛り、白ごまと海苔を散らし、つけ合わせの野菜を添える。
大和芋を混ぜ込むことでまろやかさが加わります。
●おすすめは「焼きホタテのカルパッチョ風」
 あっさり味の肴といえばやはり刺身。素材の持ち味を存分に楽しめます。中でも貝類は高タンパクというだけでなく、旨み成分のコハク酸等が酒の旨みとピッタリ合い、しみじみとした美味しさを奏でてくれます。この料理はそんな貝の刺身にちょっと手を加えた逸品。塩・こしょうだけでシンプルに味付けし、スダチの酸味で甘みを引き出します。酒毒を消すセリを薬味に使うのがポイントです。

焼きホタテのカルパッチョ風

■材料(4人分)*写真は3人分
ホタテ貝柱(刺身用)
300g
塩、こしょう 1/2個
スダチ(絞り汁) 1&1/2カップ
サラダ油 少々
イクラ、セリ、紅たで 各適宜
醤油 各適宜

■作り方

  1. ホタテは薄く切って油を薄く引いたフライパンで表面をさっと焼く。
  2. 1.を皿に並べ、上から塩、こしょうをし、スダチの汁とサラダ油を降りかけ、イクラとセリ、紅たでを全体に散らす。最後に醤油を回しかけて頂く。
スダチの酸味であっさりといただきます。イクラの塩味が味を引き締めてくれます。
 佳き酒に佳き肴があれば、冬の夜長はことのほか華やいだものとなり、宵の訪れが待ちどおしくなります。
 和食文化の一つの粋といえる日本酒と肴。健康にもいい、この魅力あふれる世界を今からの季節、心ゆくまで堪能されてはいかがでしょうか。


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