食の彩々

見た目のおいしさは「彩り」から。
今回は日々の料理に簡単に応用できる、
彩りのテクニックについて まとめてみました。

おいしさの大切な要素“色彩


 


色で四季を愛でる和食の心

 絵画をはじめ、美しいと感じる様々な芸術は、赤・青(緑)・黄の3原色がバランスよく配され、人の心を華やかに、心地よくさせてくれます。
 それは食の世界においても同様です。同じ料理でも3原色のバランスを考えるのと、考えないのとでは、「見た目のおいしさ」に大きな差が出ます。というのも、実際に口にするまで、「おいしそうか否か」の判断は、「舌=味覚」ではなく、「色=視覚」や「香り=嗅覚」によるからです。
 また、彩りを考えることは、魚や肉、野菜、玉子等、多種多様な食材を取り入れることになり、栄養学的にも理にかなっています。

 素材の色によって季節を表現するのは、和食独特の技です。
 春は木の芽や菜の花、桜鯛、桜の花びら等、淡い緑やピンクを使って初々しさを出しましょう。夏は大葉や氷で涼しさを。秋はユズや紅葉を添えて落ち着きを。そして冬は濃い色の器に湯気を立ち上らせて暖かみを― 食卓に季節感を取り入れることで、毎日の食卓がいっそう華やぎ、心豊かになります。





 

色のバランス

緑の食材を主にする場合

 まず「どの食材を一番目立たせたいか」を考えます。そしてその食材の色を主におき、相性のいい色をバランスよく組み合わせていくと、すっきりと美しく見せることができます。

 緑系の食材が主の料理とは、つまり野菜料理のことです。相性のいい食材の色は「黄・赤」ですが、合わせる際は両方使うのではなく、どちらか1色に。配色の割合もほんの少しで良く、「おひたし」を例にした場合、青菜9割、針ショウガ(またはミョウガ)1割となります。こうすることで、野菜の緑が引き立ち、料理全体が引き締まります。
 器は白・クリームの無地か柄入り(赤絵等)、濃茶の無地(焼き締め等)、または黒を選ぶようにします。

赤(茶)の食材を主にする場合 黄の食材を主にする場合
 刺身や煮魚等、赤(茶)の食材がメインの場合、相性のいい食材の色は「白・緑・黄」です。
 配色の割合はおよそ赤が5割、白3割、緑・黄が各1割。たとえば「マグロやカツオ等の刺身」であれば、刺身5、つまの大根3、大葉1、食用菊1。「煮魚」なら、煮魚5、豆腐3、シシトウ1、針ショウガ1といった割合になります。また、器は白や黒等の無地が良く合います。
 玉子等、黄の食材が主となる場合は、「緑・赤」の食材を合わせます。
 配色の割合はグラフの通りで、たとえば「玉子焼き」なら、玉子6、ハラン3、ハジカミショウガ1。「オムレツ」であれば玉子6、ブロッコリー3、プチトマト1の割合になります。
 器は和風の場合、黒や茶、織部焼等の緑、洋風は白やパステル系の水色・薄緑等が良いでしょう。


同じ料理でも 彩りや盛りつけ方を変えるだけで、
見た目がこんなにも違ってきます。

桃の小枝やはじかみを添えて盛り合わせ、天つゆでいただきます。




日常の料理はともすれば、ごちゃごちゃして見えたり、
逆に寂しくなりがちです。
その主な原因は「色のバランス」にあるようです。
色は多すぎても少なすぎても美しく見えません。
また「器の色との兼ね合い」や「余白を活かした盛りつけ方」
「食材の切り方・調理方法」も大切です。

盛りつけ方




食材の切り方・調理方法

 器いっぱいに盛らず、余白を活かして盛りつけます。料理にもよりますが、器全体を10として料理は4〜7割程度。つまり6〜3割を余白とします。一般に和食の場合は余白を多めにとると、美しく上品に見えます。これらを踏まえた上で、料理別の盛りつけのポイントをご紹介しましょう。

[煮 物]

彩り素材(サヤエンドウ、木の芽、ユズ等)を盛りつけの最後に散らすか、天盛りにする。
※天盛り:料理の一番上にこんもりとまとめてのせる技法。

[焼 物]

大きなハランや熊笹を敷く。ハジカミショウガ等の色みを添える。

[揚げ物]

変わり衣で色みを添える。ペタッと寝かせず、立て掛けて盛る。中が見えるようカットして盛る。

[酢の物]

彩り素材を天盛りする。

[吸い物]

椀種(主素材)、椀づま(副素材)、吸口(風味づけの薬味等)の色のバランスに配慮する。


 左記のポイントを実行してもまだ、何となくアカ抜けない場合は、食材の切り方や調理方法をチェックしましょう。煮物などで食材を複数使う場合、同じ大きさに揃えて切るのが基本ですが、飾り切り(または型抜き)を取り入れると、華やかです。
 調理では、煮物や吸い物に醤油を使い過ぎると素材が黒ずみ、全体に色が沈んで見えます。薄口醤油等を使うなどして工夫してみてください。焼物や揚げ物は、焼き加減や揚げ色に注意して。ほどよいキツネ色が、おいしそうに見せるコツです。
 以上のポイントはあくまでも基本です。芸術の世界同様、表現は自由。料理の個性や感性を「彩り」に活かすことで、「食の楽しみ」が広がります。難しく考えず、気軽な気持ちでぜひ、チャレンジしてみてください。

監修/フードコーディネーター 梶川 智代



さわやかな緑と優しいピンクが 春の味覚を引き立てます。



若草揚げ

■材料(4人分)

モンゴイカ(胴のみ) 1/2 パイ
枝豆(サヤ付き) 200g
片栗粉 適宜

卵白 1個分  
塩・酒 各少々
揚げ油 適宜

■作り方

  1. イカは両面に斜めの切り目を入れ、一口大に切り、塩・酒を振る。
  2. 枝豆は茹でてサヤから取り出し、粗みじんにする。
  3. トマトはくし型に切る。
  4. 1に片栗粉、軽くほぐした卵白を順につけ、2をまぶし、中温の揚げ油で揚げる。



早春揚げ

■材料(4人分)

フキノトウ 4個
揚げ油 適宜


(小麦粉  大さじ2)
(水    大さじ2)

■作り方

  1. フキノトウはさっと洗い(汚れた葉ははがす)、10〜15分水につけてアク抜きする。
  2. 1の水気を切り、Aを混ぜ合わせた衣をつけ、中温の揚げ油で揚げる。

あられ揚げ

■材料(4人分)

松葉ガニの身 150g
片栗粉 適宜
卵白 1個分

あられ 1/2カップ
揚げ油 適宜

■作り方

  1. 松葉ガニは、片栗粉、軽くほぐした卵白を順につけ、砕いたあられをまぶし、中温の揚げ油で揚げる。


食の神々 九

色鮮やかな愛と美の女神
【 ヴィーナス 】(ギリシャ・ローマ)
 ヴィーナスはギリシャ神話の中では、アフロディテの名で登場する愛と美の女神。海で生まれた彼女は、風に吹かれてキュプロス島に流れ着き、四季の女神たちに美しい衣装や宝石で豊かに飾り立てられました。その美しさはあらゆる神々を魅了し、彼女は美の象徴となりました。
 ヴィーナスは星でいえば金星にたとえられます。各星にはシンボルカラーがありますが、金星は青・緑・ピンクの3色と色彩豊かです。
 また、もともとヴィーナスは、ローマの菜園を守る神だったともいいます。菜園の四季の彩りが、そのままヴィーナスの美しさへと伝えられたのかもしれませんね。


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